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[読了] 演劇の一場面 -私の想像遍歴-

演劇の一場面 / 小島信夫
水声社 2009年2月(初版)

演劇の謎。
自作戯曲の演出にも手をそめた著者が「オイディプス王」、説教「をぐり」、「ハムレット」からカントールに至る古今東西の演劇を逍遙しながら、<<軌道から外れ、軌道に復したときには予想しなかったものをまとってくる>>演劇の諸相を軽やかに考察する。 (帯)

少しずつ読み進めていたものの、中盤から終盤にかけてすっかり集中力を失い、しばらく放置していた本書であるが、えいやっと残りわずかのページを一息に読み通し、ようやく読了。ものすごい疲労感。収録内容は以下のとおり。

::イプセンとチェホフ
::オニール、ミラー、ウィリアムズ
::カフカ、ドストエフスキー、「リア王」
::アリョーシン「恋愛論」
::横浜ボート・シアター「小栗判官・照手姫」
::カントール「死の教室」
::小栗判官伝説と「浅茅が宿」
::蜷川幸雄演出「オイディプス王」
::ヴィゴツキーの「ハムレット」論
::パロディとしての「ハムレット」
::「ペリクリーズ」
::「ハムレット」1~9

その他、松本和也氏によるあとがき、近藤耕人氏と青木健氏が執筆した別冊附録も挟み込まれている。「演劇」という芸術形態を透過させた向こう側にある「小説」についての考察には興味深い部分もあるのだが、そもそも僕は演劇について造詣が深くないし、小島信夫の戯曲「一寸さきは闇」を読んでから、やはり「小説家」小島信夫以外への興味を失ってしまっているようである。

とくにナゾは解こうとも思わぬし、解けてしまうナゾは、つまらぬものなのかもしれない。もともと解く解かぬというようなことよりも、想像遍歴をするうちに、私の世界が狭まるかと思うと拡がり、拡がるかと思うと狭まるということをくりかえすことを楽しみたいのである。(本書150ページより)

[待機] 残光(新潮文庫)

残光(新潮文庫)

時は来た!それだけだ。

Amazonに書影なく、新潮社bk1にて確認。単行本の平野甲賀ワークスを踏襲。
個人的には、新潮文庫の既刊「アメリカン・スクール」より読まれるべき作品だと思う。

[圏外] 好きな作家アンケート

今日の読売新聞朝刊に、好きな作家アンケートが掲載されていた。
どうやら3年に1度実施しているらしいのだが、色々な意味ですごいランキングに。

01. 司馬遼太郎
02. 村上春樹
03. 東野圭吾
04. 松本清張
05. 宮部みゆき
06. 太宰治
07. 夏目漱石
07. 西村京太郎
09. 赤川次郎
10. 五木寛之
11. 藤沢周平
12. 吉川英治
13. 瀬戸内寂聴
13. 山崎豊子
13. 渡辺淳一
16. 向田邦子
16. 山本周五郎
18. 芥川龍之介
18. 池波正太郎
18. 伊坂幸太郎
18. 内田康夫
22. 井上靖
22. 川端康成

小島信夫は何位なんだろう。高橋源一郎は何位なんだろう。
車谷長吉は何位なんだろう。江戸川乱歩は何位なんだろう。
森敦は何位なんだろう。カフカは何位なんだろう。圏外万歳。

[新刊] 美濃(講談社文芸文庫)

傑作の誉れ高き「美濃」が、まさかまさかの文庫化。
http://www.bk1.jp/product/03172708

講談社文芸文庫。1,785円。発売は11月です。
同月には新潮文庫から「残光」も出ます。11月はコジノブ祭り!
ひょっとしてこれは確変入ってしまったのかもしれません。

管理人による「美濃」つれづれ感想文はこちら

[新刊] 残光(新潮文庫)

まさかの文庫化。
http://www.bk1.jp/product/03163615

新潮文庫。460円。発売は10月(※11月に変更になった模様→新潮社
文庫版の楽しみのひとつはやはり解説に尽きるのではないだろうか。
そこで、今回の執筆者を勝手に予想してみる(◎本命 ○対抗 ×大穴)

+ + + + +

◎保坂和志
小島信夫との親交は言わずと知れたところ。
「残光」の作中にも登場するキーパーソン。やはり本命か。

○坪内祐三
名著「『別れる理由』が気になって」の著者。
講談社文芸文庫「対談 文学と人生」の解説を書いた実績もあり、有力。

○磯崎憲一郎
先日の芥川賞受賞スピーチで小島信夫への敬愛を表明。
知名度的にはやや不安もあるが話題性は十分。有力対抗候補。

○堀江敏幸
同郷・岐阜つながり。小島文学賞選考委員も務める。
昨年、岐阜県図書館で開催された小島信夫展にて講演

×茂木健一郎
脳科学者。小島信夫フリークとしても有名である。
「残光」単行本発売時の書評あり。文庫版での再指名はあるか。大穴。

×ノジマコブオ
当ブログ「小島信夫が気になって」管理人。
本当に「小島信夫が気になって」いるだけの一般人。大穴中の大穴。

[復刊] 筑摩書房「現代日本文学大系」全97巻

現代日本文学大系90

筑摩書房の「現代日本文学大系」が限定復刊される。セット価格は税込611,100円。単品販売もあるが、純文学フリークとしてはやはり全巻セットで欲しい。だがしかし。欲しいけど高すぎる。高すぎるし置き場所がない。置き場所がないし読む時間がない。

小島信夫の作品は第90巻「島尾敏雄 小島信夫 安岡章太郎 吉行淳之介集」に収められている。以前ブックオフで購入した初版本を確認すると、収録作は「小銃」「吃音学院」「殉教」「馬」「アメリカン・スクール」「十字街頭」「返照」の7編。このうち、現在流通している講談社文芸文庫と新潮文庫を併せても読むことのできないものは、「十字街頭」と「返照」の2編である。

[読了] 『別れる理由』が気になって

『別れる理由』が気になって / 坪内祐三 『別れる理由』が気になって / 坪内祐三
講談社 2005年3月(初版・署名)

現代日本文学の最高傑作か、天下の奇書か!こんな破天荒な小説は見たことがない!毀誉褒貶の激しい小島信夫の家族小説『別れる理由』。刊行から二十余年、初めて本格的に論じられる根源的で異様な作品世界の全貌。 (帯)

今年6月5日に読み終え、もう一度じっくり読みはじめ、7月16日に2回目の読了。いまだソース元となる「別れる理由」を通読していない僕が、この種の作品論に目を通してしまうことついては多少なりとも複雑な気持ちがあった。ネタバレは回避できない。本来ならば「別れる理由」を通読してから読むのが正しい道筋ではないだろうか。そういったすっきりとしない心持ちを抱えつつ読み進めることになったのだが、この画期的な評論はいわゆる「虎の巻」でも「副読本」でもなく、さながら20年後の続刊「別れる理由IV」のように僕には感じられた。江藤淳の「自由と禁忌」によって、この大長篇小説をコンパクトに知る手がかりを与えられ、同時に「読む必要のない小説」であるという先入観を植え付けられてしまったと、著者である坪内祐三氏は述懐する。僕はまさに「『別れる理由』が気になって」によって、この化物小説をコンパクトに知ることができた。そして、原典を読んでいない読者には「答え合わせ」の楽しみが残されている。

坪内氏は講談社文芸文庫で小島信夫の著作を購入し、図書館にも行く。「正直に言おう。私は小島信夫のさほど熱心な読者ではなかった」と早々にカミングアウトする。彼は高名な「評論家」であるが、それ以前に僕たちと同じ「読者」であった。それにしても氏のような「読者」に読まれ愛される作品は幸福であるし、小島信夫も作者冥利に尽きるのではないだろうか。しかし「別れる理由」が不幸だったのは、リアルタイムの物語でありながらリアルタイムで批評されなかったことにあると分析する。あの江藤淳ですら連載中は「別れる理由」をスルーしており、単行本化された段階で初めて通読したらしい。坪内氏は江藤淳の鋭い文学的感性を認めながらも、きちんと「読まれていない」箇所については、容赦なく異議を唱えていく。

また、完結までに長い時間がかかった作品の一例として志賀直哉の名作「暗夜行路」を挙げ、「別れる理由」との違いを解説する場面が印象的であった。「暗夜行路」は一種の教養小説であり、小説世界の時間と執筆に費やされた現実の時間はお互い影響することはないという。それに対して「別れる理由」については「リアルタイムに近い時制で物語が展開して行く(小説世界が動いて行く)『別れる理由』は、その外部世界の時の経過の影響を受けながら、小説が、中途からはその定型を越えて、増殖して行く。いや、停滞して行く」と述べている。この「暗夜行路」との対比は実に有効で、明瞭かつ雄弁に「別れる理由」の本質を言い当てている。さらに「増殖して行く。いや、停滞して行く」という微妙にねじれたセンテンスも興味深い表現だ。

僕は小島信夫の小説を読んでいると、しばしば誰の発話か把握できなくなることがある。坪内氏は錯綜する言葉から主体を丁寧に読み解き、僕たちにわかりやすく説明してくれる。さらに、長大な物語のハイライトと併せて「難所」をしっかり教えてくれる。主人公の「夢くさい」世界が始まる第59章以降、登場人物が他者へと変容を繰り返しながら会話を続ける第60章以降と、第93章から第115章までが、通読を試みるたいていの読者が置いてきぼりになる難所とのこと。ただ目で文字を追うだけになりそうなそれらの箇所を精読し、解釈を加えて論じることは、並々ならぬパワーが必要だったはずだ。事実、ときおり連載を続けることが難儀であることを吐露する場面もある。しかしそれでも彼が連載をやめなかったのは、小島信夫が2003年1月に発表された短編「青ミドロ」内で、「『別れる理由』が気になって」について言及した一件が大きく影響しているようだ。「私は坪内さんが待ち遠しい、という思いもあります」と小島信夫に言われてしまったら、それはもう中絶するわけにはいかない。それにしても、「『別れる理由』が気になって」連載中のリアルタイムな時制にまで"小島信夫"が参入してくるとは、なんとメタ的な評論だろう。

ふと思い出したのだが、高橋源一郎は著書「文学なんかこわくない」の中で、「小説を論じるためには、元の小説の少なくとも二倍、概ね三倍以上の原稿量を必要とする」と書いていた。その驚くべき内訳は「元の小説+感想+もうひとつの小説」=「元の小説×3」。これが、小説の評論の唯一の「正しい」あり方なのだと断言し、その方法論を実践した数少ない例として挙げられたのが、小島信夫の「漱石を読む-日本文学の未来」であった。やや長いパラグラフになるが、高橋氏の論を引用する。

小島信夫という人は「漱石を読む-日本文学の未来」という本で夏目漱石の「明暗」を論じた。小島信夫という人は、「明暗」を最初からどんどん引用した。それから、それについて、どんどん論じた。しかし、いくら論じても止まらなくなっちゃった。(中略)そうこうするうちに、止まらなくなって、途中から小説になっちゃった。そういう具合に暴走して、「明暗」に戻れなくなって、他の作品を論じたりもしちゃった。その結果として、それは元の「明暗」より遥かに長い評論に、まるで弁当箱みたいにでっかい本になっちゃったのである(昔のいわゆる「ドカ弁」ね)。そして、「小島信夫、ボケちゃったんじゃないの」とか「面白い本だけど、長すぎる!」とかいわれた。だが、とタカハシさんは思う。あの本の唯一の欠点は、あれでも短すぎることなのだ。もちろん、小島信夫という人はそのことを重々承知しているはずなのである。

よもや「別れる理由」について、高橋源一郎氏の提唱する「×3方式」を実行しようとする人はいないだろう(死んでしまう)。しかし、この「『別れる理由』が気になって」という評論における坪内氏からは、まさにその領域に近づこうという気概が感じられるのである。初出は「群像」2002年5月号、7月号~12月号、2003年4月号~2004年3月号。

[発言] 磯崎憲一郎のあがりはな

1日数名、多いときでも20名弱の訪問者しかなく、広漠としたインターネットの片隅で身をひそめるように呼吸している拙ブログだが、昨晩から今日にかけてアクセス急増。「すわ、小島信夫ブーム到来か!?」と思ったのだが、どうやら芥川賞を受賞した磯崎憲一郎氏が、昨日の記者会見で小島信夫の名前を挙げたことが影響しているようだ。

:: 芥川賞に磯崎憲一郎さん、直木賞は北村薫さん(YOMIURI ONLINE)
:: 「90歳まで書きたい」芥川賞作家は現役商社マン(Yahoo!ニュース)

「受賞で小説家として書く場を与えていただけたと思う。これが大きな意味を持つ。目標は一生書き続けること。(敬愛する作家)小島信夫さんのように90歳まで書きたい」

[新刊] 未完の小島信夫 - 続報の続報

いよいよ「未完の小島信夫」発売日となった。

池袋西武のリブロにはそもそも期待していないが、案の定入荷しておらず、帰宅後に各通販サイトで検索。在庫を確認し、早速注文を済ませたところである。現在「未完の小島信夫」が購入できる主なオンライン書店と、商品へのリンクを以下に記す。

Amazon / ビーケーワン / 楽天ブックス / セブンアンドアイ / 紀伊国屋書店 / JBOOK

[新刊] 未完の小島信夫 - 続報

未完の小島信夫

当初は6月下旬の配本が予定されていた「未完の小島信夫」だが、いよいよタイトルから"仮"も外れ、満を持して7月11日頃に発売されるようである(情報元:水声社blog

中村邦生+千石英世
「未完の小島信夫」
四六判296頁/定価=2500円+税
ISBN978-4-89176-736-5 C0095
装幀=宗利淳一

小島文学は、いつも新しい。
なぜ、いまなお私たちは小島信夫に魅了されるのか?
作家と評論家が縦横に語りつくす等身大の魅力とその実像。

*小島信夫との発掘対談も併録!

still alive=未完。禍々しい表紙が素晴らしい。屹立する鉄塔、頭上に張り巡らされた送電線、なにものかを見つめる小島信夫の眼差し、側頭部・・・。心がざわざわしてくるではないか。未公開対談も貴重なアーカイブとなるだろう。

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